「ST,在宅やってるってよ」その36
在宅ではじめたばかりのSTさんから時々こんな相談を受けます。
「食事介助をして欲しいとオーダーがありましたが、これはSTの仕事ですか?」
「歩行訓練をして欲しいと言われましたが、出来ないので困っています、でも断れなくて」
色んな方がこういった内容で相談されるので「あるある」なんだと思います。
逆に、他職種の皆さんとお話している際に、
「うちはSTも歩行訓練出来るんですよ」
「PTで嚥下見てるからうちはST要らないです」
「うちは食事介助にSTが入ってるんでヘルパーさん少なくても大丈夫なんです」
と、誇らしげに言われたりします。
この両者は同じ所属では無いですが、きっと同じような感覚なんだろうと感じます。
こういったことが、
是か非かでいうと、
結論は
「ケースバイケース」です。
答えになってないじゃないか、と思われるかもしれませんが、
大切なのは2点
①STとしての専門性を実施するために付随するものであれば必要
②STとしての専門性を必要とせず、漫然と「だれもがやれる」
又はその事業体で主導権を握っている方の偏った認識で決められているなら不適切かも
①に関して言えば、パーキンソンなど全体に体が強張り易い方に対し、発声・嚥下だけを
見ていてもSTとしての専門性は活かされません。
体全体のROMは日々の全身のコンディショニングとして最低限は必要ですし、喉頭周囲の可動域を促進する、その後の呼吸発声にも繋がるので行っています。
他にも、嚥下障害と環境的に離床機会が得られず、ベッド上で過ごしている、方に関してはROM,端座位、抵抗運動を行った上で摂食訓練・評価につなげます。食事までの疲労を考慮し、適量を食べられるか、不足しやすい場合は状況から補助栄養を導入したり代償手段の検討や、食べ方、その前後の準備、留意点をアドバイスします。リハ栄養の観点からも食前に抵抗運動、その後の栄養摂取は有要です。
小児のコミュニケーション練習で対人、机上が難しい場合は自然観察や一緒に遊んだり、体を動かす粗大運動からコミュニケーションスキルを積み上げたりします。
高次脳機能障害があり、実際に注意機能として社会復帰に向けて買い物が一人で行けるか、などの課題がある場合は同行し道路横断、売り場での注意分散など評価したりします。
私が行っている一例として挙げましたが、これらはきちんとご利用者、家族、支援者に説明同意を得た上で行うことが大切です。取り違えられると「あのSTはST訓練してない」「次も食事介助してくれるやろうし、してもらおう」「歩行訓練してもらおう」となります。
説明・理解・そこから得られた結果のフィードバックをしていれば、そういった誤解は起こりにくいです。
②に関して、地域社会資源として不足していたり、サービス上限などの問題から兼任せざる得ない、など「止む無く」行っている場合は例外ですが(保険外の社会資源の活用も考えてほしいですが)
ただし、漫然と根拠となる理由なく「でもしかリハビリ」としてなら不要です。
止む無く行っていることもセラピスト内でシェアするより他の他職種にシャアした方が効果的かもしれません。(例、歩行身体のサービス資源が足りないならSTがするより訪問マッサージの柔道整復師などの方が対応範囲だったり、嚥下のST資源が足りない時にSTが少ないなら日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士の他職種(訪問歯科、歯科衛生士等)を探す等 )
訪問看護ステーションからセラピストが訪問に行けるのは
「看護師が訪問するより対象分野の専門性を求められるケースと判断される」からです。
専門性が必要とされると判断されない場合は、その分野の専門職を紹介しましょう。
専門的知識は積み上げが必要な「垂直学習」です。
その部分だけを切り抜いて習う「水平学習」では臨機応変に対応出来ないため、
何となく「何かの専門職の代わりの業務」を行っていると、いずれトラブルになるリスクがあります。
それを多職種に全て浸透させオールマイティな支援者を全て育成することは現状、不可能ですし、仮に出来たとしても時間と手間を誰が補填するのかということになります。
そういった構想を実現するには教育機関や要請カリキュラムの大綱変更などが必要です。
日々の食事介助、身体介助は専門とする介護福祉士、身体評価動作評価は理学療法士という
垂直学習をされた方が適任なわけです。
私の学生時代、STは学校にもよりますがカリキュラムとして身体介護はほぼ入っていませんでした(現在は変わってきているとは思いますが専門職レベルでは無いのです)
自身の専門業務に付随して必要だと感じた手技や知識はST資格取得後に学びました。
この部分は在宅で携わるST内でもかなり差があると感じます。
「この人にはこれが大切だからSTも同じことを!」と
自分都合や自身の理想で押し付けてもこういった学習は一朝一夕には習得出来ず、ストレスから長期的には離職やサービスへの不満足という形になる可能性があります。
逆もそうでしょうが。
そして、なにより、それがご利用者本位であるかが判断基準になります。
俯瞰して想像すれば
「専門性のある人に自分の困りごとには対応してほしい」
自身が当事者の立場なら思うのではないでしょうか。
自事業所内でそういった部分が解決出来ない場合は、主治医の指示書やケアプランにそっているか、なども根拠にしたり、第三者への相談も必要かもしれません。
まだまだ地域に少ないST,効果的に、必要な方に行き届くように支援者の意識もまだまだ変わっていく必要があると思います。
STも自分が地域で出来ることをしっかり主張、言語化出来るように心がけたいものです。
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