「ST,在宅やってるってよ」その50
今回は認知症へのSTとしての在宅支援についてです。
認知症からの記憶、コキュニケーションに関する相談、言語療法への依頼
というのが多いですが(嚥下+認知症などに関してはまた後日)
これまでの経験から行くと、
症状が進み、言語表出、理解共にほぼ難しくなってからの依頼、相談は
対応の難しさが正直あります。
言語機能がここまで難しくなっている認知症者の多くはそれ以外の認知機能
(記憶や視覚認知機能等)も進行しておられることが多く、
急に「知らない誰か」が来ても、不安を助長する悪影響の方が多いからです。
ですので、最近良く言われていますが、やはり在宅ST支援も「初期対応」が
大切ですので、認知症と診断されて初期の頃から関わらせて頂きたいです。
初期から関わっていくメリットは幾つかあります。
・担当者を認識し、進行していく中でも担当者として安心感がそれまでにあれば
→比較的長期に安心して関われる関係を築きやすい(前述の途中から担当して混乱という状態を遅らせることが出来る)
・得意な認知機能と苦手な認知機能を評価することで、
「その人らしい生活」 を持続しやすくする提案が出来る
例えば
・書字で漢字と仮名で大きく能力の差が初期に出てくる方が入れば
漢字が思い出し難い時はかばんのメモを見ながら氏名住所は書く、他の文は平仮名は
書きやすいから、代用しましょう。
だったり
・構成能力が初期に低下してきたが、言語能力が良い方なら同じような箪笥の引き出しに
何が入っているかのシールを片隅に貼る工夫で不安が減る
・テレビのリモコン操作が難しくなってきたら、その理由が視覚認知の難しさにあるなら、
最低限必要な電源、音量、チャンネル以外の部分をカバー(〇〇予約とか要らない機能のボタン)してレイアウトをシンプルにする
最近はgoogleアシスタントやamazonアレクサなどスマートスピーカーで
定期的に約束などをリマインダー設定してお知らせすることで不安(お金が無いんじゃないか→お金は昨日10万円卸したので大丈夫です)や約束(午前10時、デイサービスの準備です)などを活用して記憶をサポートして自立生活を保つということも可能になってきたりしています。
ただ、こちらも元々スマートフォンやスマートスピーカーの免疫が無いと、進行してから急に導入、となっても難しかったりします。
また言語表出にウェイクワード(OKグーグル、アレクサ、)が想起困難だったり、メモをスムーズに代読出来なかったりすると混乱を招いたりもしますので
幾つかの留意点への考慮は必要となります(この辺りはまた別の機会にしっかり書いたり、お伝えする機会を作れればとも考えています、、)
また書字能力や聴覚把持力からの低下に対し、スマートフォン操作が元々可能な方ならメモ機能と音声入力設定をマスターすれば代償が一気に可能となります。
これからの高齢者や若年性認知症の方への提案としては言語機能を精査出来るSTのアプローチ手段として必須かな、と考えています。
もう一つ大きなポイントは
認知症そのものを「治す、改善させる」では無い、という認識の基に進めることだと思います。
症状や不安を減らすこと、苦手な事があっても他の手段を得意な能力で可能な範囲でマスターしたり、家族介助者と共に把握、実践することで望む生活をしやすくするお手伝い(特にコミュニケーション)というスタンスが大切だと思います。
練習に囚われず、訪問して不安が強い時は不安に感じることを傾聴し、その部屋や場所で
一緒に確認し、一段落したら別の会話でリラックス、が主な日もあると思います。
ご家族に対しても、出来なくなったことがあるからその方自身の知性や性格、これまでの人生が否定されないような説明、普段の関わり方などの説明はその都度必要となります。
介護者家族の負担感に傾聴し、必要であればケアマネジャーと相談し、別のサービスなどの提案も適宜行っていきます。
それは必ずしも在宅に居続ける、ということが目標ではなくなる場合もあります。
施設に入所しての家族との関わりが続けられる方が良い、という場合もあります。
施設や新しい通所等環境のサービスを導入していく時も、
一つの施設だけで決めず、幾つか見学したり、合わないと思ったら変更しても良いこと、
などもお伝えしたりします。(一度提案されたら変えては行けない、と認識されている方、ご家族が結構いますが変更を申し入れられず我慢して利用したり、、)
こちらからも新しい環境でのサービス開始に際しての担当者会議では
リロケーションダメージ、ストレス(環境変化から数日せん妄や不安、認知機能低下が増長される)についての説明も予め共有しておくと、いざそういう事象に遭遇したときに支援者家族も心の準備が出来たりします。
とはいえ、まだまだ初期からの担当が難しかったりします。
初期から開始となっても担当ケアマネジャーさんから
「本当はこの方、まだ訪問は要らないと思ってるんです、今はデイのみで良いと」
確かに、外に出てもらう、という意味では大切な視点ですが
要支援の介護度で日常会話は自立されている初期でも
言語機能からの進行がある場合、デイでの集団レクの説明や参加者同士の会話に
追いつけなかったり、常に最大限気を張っていないと、理解や発話が出来なかったりと
ストレスを感じていたりします。デイにSTが居て、その辺りの橋渡しが出来るなら問題ないと思いますが、コミュニケーションの専門職が不在のデイのみの利用ではこの辺りの問題が見落とされ、デイの利用や社会参加事態に苦手意識が強まり引き篭もってしまう、ということもあります。
前述のデイの進行スピードについて行けずキャンセルされるようになった方は
「私は、進行して、話せなくなったらどうしたらいい?」と聞かれました。
私の担当している重度運動失語で車椅子で一人で飲みに出歩いている方の話をし、
その後、失語症当事者同士が集まるお茶会でお会いするようになりました。
(その会ではこの方は一番しゃべれるので会話進行だったり、周りに気配りもして下さるように、、、デイをその後変えて再度利用されるようになってもお茶会の日はデイを休んで着て下さる様になりました)
こういったピアカウンセリングや障害、症状に関係なく「役割」を持つことは
「注文をまちがえる料理店」や農業での出来高作業での社会参加など少しずつ広がって来ています。*
その人らしく出来るだけ過ごせるサポートとして言語聴覚士の専門性を活かしていければと思います。
*注文をまちがえる料理店記事(なかまある)
https://nakamaaru.asahi.com/article/12660339
*京野菜いのうち
https://www.ujihf-alliance.com/organization/organization-354/
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